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Column
シャトー・ラ・ラズ・カマン/シラズ 2021
ワインテイスティング

シャトー・ラ・ラズ・カマン/シラズ 2021

Chateau La Raz Caman / SHIRAZZ 2021

【品種】
シラー 100%

【造り手の紹介ページ】
https://midoriya-saketen.co.jp/articles/640/

先日、入荷したワインリストを見て思わず我が目を疑いました。なんと、シャトー・ラ・ラズ・カマンがシラー100%のワインを送ってきているじゃないですか!

このシャトー・ラ・ラズ・カマンというのはフランス・ボルドー地方の造り手です。ボルドー地方では伝統的に「カベルネ・ソーヴィニヨン」や「メルロー」、「カベルネ・フラン」といった黒ブドウ品種が育てられています。

一方、この「シラー」という品種は、ボルドーより南東側に離れた土地「コート・デュ・ローヌ地方」という土地の名産品種なのです。

フランスという国は、ヨーロッパを含むその他の国に比べてワイン文化の洗練具合が頭一つ抜けています。その中においてはブドウ品種の栽培エリアも最適化されており、地方別に育てるブドウも違っています。

もちろん例外はあるのですが、そういったエリア外のブドウは※AOC 認定されない事が多く、一生懸命作ってもワインに割安な値段しか付けられないという事態になってしまいます。

その為、殊ボルドーやブルゴーニュと言った世界的に有名なAOC下において、伝統的にその土地で育てられてきた品種以外のブドウを育てる事はかなり珍しいです。

※AOC(その国の中でのワインのブランドの事。ブランド毎に認定を受けるには厳しいルールを遵守する必要があります)

そんな状況下において、このボルドーの造り手はシラー100%のワインを出してきました。

買いブドウで造ったのか、ボルドーにシラーの畑を切り開いたのか。情報は全くありません。更に、彼等が造るワインの中でも最も高い値段が付いています。これは相当自信があるのでしょう。

一体どんなワインに仕上がっているのか。
試飲をしてみました。

注いでみると、やや紫掛かったガーネットの色合いのワインが、活き活きとグラスに映えます。鮮烈な果実味と爽やかな芳香を期待出来そうです。

香りには完熟したブルーベリーやラズベリー、また仄かにコショウのようなスパイシーな香りがあります。複雑な香りはほとんど感じられず、果実由来の甘い香りがやや強めです。

口に含むと、ワインが内に秘めていた果実感が爆発します。完熟を超え、煮詰めたブルーベリーやラズベリーの果実感が鮮やかに感じられ、丸みを帯びた甘味が広がります。フレッシュであるが故の酸味も全体の味わいに芯を通しており、濃い一辺倒ではなくバランスも良好です。

伝統の地、ボルドーからのシラーという事で勝手にクラシカルな味わいを想像していましたが、これはどちらかと言えばニューワールドチック。分かりやすい程の果実感の迫力があります。これからの変化が楽しみです。

ボルドーの造り手のシラーという事で、伝統と挑戦を感じさせる、なかなか楽しいワインでした。

ところで、このコラムの最上部にワイン名のフランス語表記があります。そこに「SHIRAZZ」という表記がありますが、これは品種名であるシラーのオーストラリアでの通称「Shiraz」と自身のドメーヌ名である「Raz」を掛け合わせた名前となっています。こういった所からも、敢えてニューワールドを意識したキュヴェなのかな? と思わせてくれます。

また「Shirazz」は日本の「いろはもみじ」を指す言葉でもあるようで、エチケットには楓のイラストが描かれています。

小林


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