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エリック・カム/ミュスカ・ナチュール “カーマ・スートラ” 2018
ワインテイスティング

エリック・カム/ミュスカ・ナチュール “カーマ・スートラ” 2018

ERIC KAMM / Muscat Nature “Kammasutra” 2018

【品種構成】
ミュスカ・ルージュ 50%
ミュスカ・ブラン 50%

 今回はナチュラル・ワインのど真ん中、酸化防止剤無添加、無濾過で作られたエリックさんのワインを試飲しました!

 対象のアイテムは「カーマ・スートラ」。果皮の赤いマスカットとワイン用マスカットを、マセラシオンの上ブレンドした(いわゆるオレンジスタイル)という、名前も造りも挑戦的な意欲作です。

 エリック・カムさんはアルザスでワイン造りをしています。代々ワイン造りの他、野菜の栽培や畜産もしており、エリックさんはその畑の一部を分けて貰いブドウを育てています。世代を超えて伝統農法で耕され続けている畑ですので、若手でありながら非常に良質なブドウを収穫出来ている事が強みです。

 ワイン造りは、栽培・醸造共に「可能な限り人の手を介在しない」という自然を尊重した造りにこだわっており、また瓶詰めも含め酸化防止剤を一切使用していません。「ボトルの中に、人生や幸せを込めたい」というエリックさんのワインは、伸びやかな果実感がすーっと体に入っていくような、そんな優しい味がします。

 さて、標題の「カーマ・スートラ」を試飲していきましょう。

 まず抜栓、微かに発泡しています。酸化防止剤が入っていない故の再発酵に由来する物と思われます。明るい柿色(Persimmon)の色調をしており、ノンフィルターの為、澱絡みのスタイルです。自然派の造り手の中には「健全に栽培されたブドウを使っているので、澱も全て旨味」という考えの方もいます。

 グラスに注ぐとハーブやスパイスを思わせる香りが広がり、完熟したマンダリンやアンズの芳香を感じられます。ほんのりと紅茶やビネガーの香りもあり、どこか野性味も感じます。フルーツを主体とした複雑な香りです。元々アロマティックな品種という事もあり、香りには元気さ、派手さを感じますね。面白い味わいが楽しめそうでワクワクします。

 香りに感じた果実味そのままに、優しくまろやかな口当たりと甘味が広がります。しっかりとした酸味と穏やかな渋み、ミネラル分も感じられ、さっぱりとした印象のある後口です。マスカットのワインですが、想像していたよりもすっきりとドライな印象でした。

 ボリューム感もありアフターは長め。アフターに苦味やビネガー感はほぼ感じられず、優しい果実感と果物の紅茶の心地よい余韻を楽しめました。

 合わせる料理は、生ハムや野菜を中心とした前菜が良さそうです。シンプルにハーブや塩で味付けをしたオーブン焼きもかなり美味しそう。その時に、少量のレモンやオレンジのスライスを一緒に焼くと、更に相性が上がりそうです。

 ボトルの中に人生を込めるというエリックさんの意欲作、彼の地元アルザスの素朴さを感じさせながら、この場所から世界に発信するという元気さを感じられるようなワインでした。かなり楽しいワインです!多くの人と彼という人柄を含めた「テロワール」をシェアする事が出来たら、それはとても素晴らしい事なんだろうと思わされます。

小林

エリック・カムの詳細
https://midoriya-saketen.co.jp/articles/336/

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