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Column
ショーム・アルノー/ヴァンソーブル・ルージュ 2014
ワインテイスティング

ショーム・アルノー/ヴァンソーブル・ルージュ 2014

Domaine Chaume-Arnaud/Vinsobres Rouge 2014

 先日の13日の会にて、ショーム・アルノーのメイン・キュヴェであるこちらのワインを試飲しました。みどりや酒店としては南ローヌの中でも特に押している造り手の一人ですので、非常に楽しみでした。8年の熟成を経たこのワインは、どんな味わいに変化しているのでしょうか。

 ショーム・アルノーは南フランスコート・デュ・ローヌ地方で代々ワイン造りをしている家族経営のドメーヌです。オーナーのヴァレリーさんはワインの醸造について卓越したセンスの持ち主で、彼女が今まで無名であったショーム・アルノーの名を凄いワインとして広めたほどです。

 1980年代、ドメーヌを受け継いだ彼女は、収穫の段階で良質なブドウと劣化したブドウを分けました。いわゆる「選果」というものですが、この頃のローヌ地方では全く一般的でなかった概念です。彼女の父からは「ブドウを無駄にするな!」と言われ、意見の対立が絶えなかったそうです。

 しかしながら、ヴァレリーさんは理想のワインの為にブドウを選び抜き、結果として周囲を驚かすほどの美味しいワインと評価を得る事になりました。旦那さんのフィリップさんと出会ってからは、二人三脚でワイン造りをしています。

 彼らの畑があるヴァンソーブル村は、「ニオフの風」、「ポンチャス」、「ミストラル」など、季節を問わず、四方八方から強い風が吹くエリアです。毎日の農作業を行う上でとても大きな障害となる一方、これらの風のおかげで朝晩の気温がぐっと下がるため、酸と糖の両方を兼ね備えた上質なブドウが出来る、またこの強風が畑の湿気を吹き飛ばしてくれるので、病気の発生が大幅に抑制されるという利点があります。

 テロワールに逆らわず、ブドウは基より働く人間もそのテロワールを受け入れる事によって、初めてその土地を反映したワインが出来上がるのだと教えてくれます。

 さて、そろそろテイスティングをしてみたいと思います。

 色調は黒味を帯びた深いガーネット色をしており、縁は褐色掛かった赤色をしています。グルナッシュの比率が高い為か、ヴィンテージよりやや熟成感を期待させる色合いです。

 香りにはたくさんの要素を感じられます。クローヴやコショウといったスパイスの香りや、ブルーベリーやカシスを煮詰めたような香り、熟成に由来する枯葉のニュアンスは果実の甘い香りと合わさって紅茶の様です。

 味わいには良く煮詰めた黒い果実の甘味を感じ、程よく溶けた渋味と共に心地よく舌を打ちます。色合いほど熟成感を強く感じるような事はなく、果実感と共に広がる複雑な味わいは素晴らしいの一言。
 何度か開けているワインですが、その度に硬い印象を受けていたワインだけあって、開いた状態だとこんなにも美味しいワインだったのかと驚いてしまいました(思わずテイスティング記事を書き残したくなった程です)。

 素晴らしい畑を継承し、知識と技術に裏付けされたワイン造りは、今後ヴァレリーさんの息子さん達に受け継がれる事になりそうです。長男のチボーさんと次男のラファエルさんは共にラグビーの選手。ドメーヌへと戻ってきた二人は、ヴァレリーさんと一緒にワイン造りをしています。逞しく育った彼らを見ると、今後のドメーヌ・ショーム・アルノーも益々隆盛となる事を期待させてくれます。

小林

 

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