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13日の会 ~マルク・ペノ~
ワインのこと

13日の会 ~マルク・ペノ~

 毎月一度、決まった日付にみんなで同じ生産者のワインで乾杯する「13日の会」。今月6月の13日の会は、みどりや酒店とも長い付き合いがあり、私自身も訪問させて頂いた事のある「マルク・ペノ」さんのワインで乾杯しました。

 マルク・ペノさんは北フランスのロワール地方、ペイ・ナンテ地区でワイン造りをしています。このエリアでは「ミュスカデ」という白ブドウを使ったワイン造りが盛んで、すっきり爽やかな味わいが好評を呼んでいます。

 ペノさんもこのミュスカデを用いてワインを造っているのですが、その味わいは全くの別物。 凝縮された白い果実の香りが口中に広がり、力強いエキス分を存分に味わう事ができる白ワインなのです。

 ミュスカデの持つ可能性を信じ、農作業から醸造まで一切の妥協をせずワインを造り上げます。その仕事は、時に早朝の収穫から醗酵の開始まで寝ずの作業となる事も。ペノさんが造るミュスカデとは思えない程の旨さは、彼の底無しの情熱と誠実な仕事から出来ているのです。

 実際のところ、AOC(簡単に言うと、ワインの規格の事)の認定機関からも、彼のワインは味わいが違い過ぎるという事で「ミュスカデ」というAOCを外されてしまっています。

 彼はそれを追う事はせず、自身の信じる味わいを追い続けています。彼のワインのラベルには使用ブドウが書かれていますが、そこにはミュスカデの本来の名前である「ムロン・ド・ブルゴーニュ」を示す表記があります。こういった事からも、彼のワイン造りへの決心が見て取れるでしょう。

 そんなペノさんのワインを、先日の13日の会では3種類ほど開けました。

 彼のメインラベルであり、自己紹介代わりでもある「ラ・ボエーム 2020」
 作柄に苦しんだ末に、セミヨンと奇跡のコラボを果たした「クール・ド・レザン 2021」
 そして地質毎のテロワールの表現をさらに深く追求した、彼の最高レベルのワイン「ミステール/アンフィボリット 2020」

 どれもこれも力強いブドウのエキス分を感じさせながら、それでいて自然に体に入ってくるような心地良さを抱かせる素晴らしい味わいでした。ある人の表現を借りるなら、日本刀のように研ぎ澄まされた美しさを感じるワインです。

 名実共に世界最高のミュスカデの造り手となったマルク・ペノさん。その味わいはヴァン・ナチュール全体から見ても、非常に洗練された稀有なものになっています。ペノさんの周りで自然派ワインを造る人は、みんなペノさんをお手本にしているそうです。

 また、最近ではペノさんのワイン造りを引き継ぐ為に、共に仕事をしている日本人がいるとの事。彼が目指した本物のヴァン・ナチュールへの道は、彼のワインが好きな造り手や飲み手を介して、世界へ、若手へと受け継がれて行くのでしょう。

 素晴らしいワインと造り手を、改めてワイン好きな仲間とシェアする事ができた、そんな13日の会でした。

小林

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