Midoriya Vin Nature
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マルク・ペノ/ラ・ボエーム 2020
ワインテイスティング

マルク・ペノ/ラ・ボエーム 2020

【品種構成】
ミュスカデ 100%

 段々と日差しの強い日が多くなって参りました。こんな陽気には白ワインがぴったり。肩の力を抜いて、気を楽にして飲める物だと最高です。と、言うわけで自然派ミュスカデの職人「マルク・ペノ」さんの白ワインを開けてみました。

 ペノさんは、ミュスカデで世界最高のワインを造るという目標を掲げている造り手です。過去に持ち寄りで世界中の白ワインをブラインド試飲をした結果、自分のワインが一番評価が低かったという苦い経験があり、その時の悔しさを情熱に変え、彼の挑戦が始まりました。

 彼のワイン造りは兎に角丁寧です。言うは易しですが、土壌の一歩一歩、葉っぱの一枚一枚を見ながら畑の全ての樹を見ているような仕事をしています。最近では彼がドメーヌを構えるロワール地方でさえ、真夏には最高気温が50度を超える日もあります。そんな日でさえ、彼の丁寧な仕事振りは変わりません。

 醸造についても、彼のこだわりは凄まじい物になっています。ブドウの実が潰れないように、少量ずつ何度も選果しながら収穫する所から始まり、フェルマンタシオン・アロマティックと名付けられた独自の技法で醗酵の初期段階を開始、そこから何時間もかけて優しくジュースを搾ります。そこから長時間の清澄を経て、ようやく発酵槽に落ち着きます。

 今でこそ最新の設備を得た事で時間に少し余裕が出来ましたが、当初は収穫が始まったら寝ずの作業となっていたそうです。これも全て「ミュスカデで最高の白ワインを造る」という大いなる目標の為です。

 さて今回抜栓した「ラ・ボエーム 2020」ですが、グラスに注ぐとミュスカデでは珍しく、はっきりとしたレモンイエローの色調が目に留まります。輝きを湛えた液体はやや粘性を帯びており、ミュスカデでありながらコクがある事を予感させてくれます。

 香りには完熟したレモンの芳香が鮮やかで、フレッシュな洋梨のニュアンスやミネラルを思わせるチョークの香りも感じられます。時間が経つ事に洋梨の香り、そしてハチミツの香りが強くなり、香りの要素の多さに驚かされます。

 口中に含むとフルーツの味わいが爽やかに駆け抜け、ミュスカデの持つ本来のエキス分が旨味となって押し寄せます。蜜を思わせるコクも豊富で、冷涼地らしい酸味との調和が素晴らしいです。最後にシトラスの仄かな苦みが全体を引き締めています。

 全体としては爽やかでクリアな味わいでありながら、ここまでたっぷりの旨みを味わえるミュスカデは彼以外のワインでは知りません。複雑味のような難しい要素は無く、ただ心地の良いエキス分に思うまま浸る事ができる、そんな白ワインです。

 お酒のお供は軽めな物であればなんでもOK。
 更なる贅沢が許されるなら、白身魚のカルパッチョにレモンハーブのオイルを掛けて楽しみたい所です。

小林

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