Midoriya Vin Nature
Column
ドメーヌ・ヴィエイユ・ジュリアンヌ/ドーマン・シリーズ・ラ・ピオッシュ 2019
ワインテイスティング

ドメーヌ・ヴィエイユ・ジュリアンヌ/ドーマン・シリーズ・ラ・ピオッシュ 2019

 世界中から名声を得ている、真にトップクラスのワインの造り手「ジャン・ポール・ドーマン」氏のワインを試飲しました。今回飲んだワインは、彼が手掛けけるワインの中で、最も安価なエントリークラスのアイテムです。

 この「ドーマン・シリーズ」は買いブドウで造られるプロジェクトです。特定の売り先を持たない農家の場合は農協に買い取って貰う事になりますが、この時は品質よりも量によって買い取り額が決まります。心血を注いで育てられた良質なブドウであっても、です。

 そういった農家のブドウを、ドーマン氏が適切な値段で買い取って造るワインがドーマン・シリーズです。自社畑では有りませんが、彼が認めたブドウを彼自身でワインに仕上げています。よって、価格は安価であっても世界トップクラスの腕が存分に振るわれているワインなのです。


 早速試飲してみましょう。

「ラ・ピオッシュ 2019」
カベルネ・ソーヴィニヨン 35%
グルナッシュ 30%
シラー 15%
メルロー 15%
サンソー、ムールヴェードル、カリニャン 計5%

 グラスに注ぐと、まず紫掛かったガーネット色が目に映ります。新しいヴィンテージらしく、縁の紫色も鮮やかです。清澄・濾過をしていないという事ですが、輝きを伴った液面に見えます。フレッシュ感のある、やや濃いめの味わいを期待出来そうですね。

 香りの第一印象(アタック)から、ブルーベリーやラズベリーなどの黒系果実を煮詰めた香りを感じ取る事が出来ます。レーズンやアールグレイを思わせる香りもあり、仄かにヨーグルトのニュアンスも。グラスを回すと、果実の香りがより豊かに感じられます。

 口中に含むと、熟した果実から来る自然な甘みが、まろやかに広がります。タンニンは溶け込んでいますね。酸味も穏やかです。南フランスの赤ワインらしい高めのアルコール感は、ボリューム感を演出しています。その為、心地の良い余韻を長めに楽しむ事が出来ます。

 濃いめの果実感が中心でありながら決して単調では無く、仄かな複雑さや口当たりに、そして余韻にまで非常にバランスの良さを感じさせる赤ワインでした。ワインを飲み始めた方にも飲み熟れている方にも「美味しい」と言って頂けるアイテムです。

 合わせる料理は赤身肉がいいでしょう。牛肉はもちろん、羊肉とも良く合います。シンプルに塩・胡椒・ハーブでの味付けや、赤ワインソースがオススメです。但し、煮込み料理やデミグラスソースなどではワインが負けてしまうかもしれません。

 世界のトップクラスが醸したテーブルワインは、熟した果実感に包まれるような、穏やかな酔い心地を提供してくれました。それと共に、香りに感じたレーズンや煮詰めたジャムの香りは、何故だかノスタルジーを呼び起こします。休日の昼下がりに、窓辺やテラスでゆったりと過ごす時間。その時、このワインは最高の友となってくれるでしょう。
 可能であれば旅先に持って行きたい。そんな事を思わせてくれるワインでした。

小林

コラム一覧へ