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ぶどう畑の土壌の話
ワインのこと

ぶどう畑の土壌の話

ワインの味わいの中に、葡萄畑の土壌の風味が感じられることがあります。
写真は、プロヴァンス地方のドメーヌ・リショームの葡萄畑です。
ポール・セザンヌが描いたサント・ヴィクトワール山の麓に広がる葡萄畑は、赤みを帯びた酸化鉄を多く含む粘土石灰質土壌です。
リショームの葡萄の樹の多くはこの地質の土壌に植えられ、その風味をワイン中にほんのり感じ取ることができます。ミネラル感があります。
プロヴァンスの温暖な気候、強い日差しに由来する豊かな果実味を、その土壌に由来するミネラルで下支えする素晴らしいバランスです。

このCOLUMELLE ROUGE 2016(コリュメル・ルージュ)は、シラー、カベルネ・ソーヴィニヨン、メルローの3つの品種を主にブレンドしたキュヴェです。熟したクロイチゴの濃縮した香り、強さが旨みに包み込まれたような骨格と、密度の高いタンニン、ブラックチョコレートを思わせる風味など複雑味があります。そのボリューム感を、酸化鉄を多く含む土壌に由来するミネラルがしっかり支えています。素晴らしいワインです!

では、その土壌に由来するミネラル感は、どのようにワイン中に入るのでしょうか。
健康な葡萄の樹は、地中深く根を伸ばし、その土壌の個性を根から吸収して果実に反映します。ミネラルもその一つ。その果実で造られたワインに、その土壌のミネラルが入るのです。
樹齢の古い樹になると、その根の深さは十数メートル以上となり、2億年以上前の地層に達しています。その地層からミネラルを吸い上げる。。
そんなロマンチックな考え方の他に、こんなことも言われています。
その葡萄の樹が植えられる土壌の物質が風などで巻き上げられ、果皮に付着してそのまま醸造される。。
ワイン造りにおいて、仕込む前に果実を洗浄しません。
どちらの考え方がお好きでしょうか?
深い葡萄の樹の根を経由して、2億年前のメッセージがグラスに注がれていると思うと、なんだか良い気持ちになるのは私だけでしょうか。。

丸山謙二

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