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イャニック・アミロ/ル・グラン・クロ 2009
ワインテイスティング

イャニック・アミロ/ル・グラン・クロ 2009

 2022/02/16

 本日のテイスティングは「イャニック・アミロ/ル・グラン・クロ 2009」です。イャニック・アミロ氏は北フランス・ロワール地方のカベルネ・フランについてトップの4人に数えられる生産者であり、未だ現役でワイン造りをしている貴重な存在でもあります。


 彼は凄まじく丁寧で誠実な仕事をする職人です。醸造所の中はまるで博物館のように整然と、そして清潔にされており、一度外に出れば連絡をつけるのが困難なほど畑仕事に没頭します。その仕事振りや考え方は感動を覚える程です。

 今回は彼のキュヴェの内「ル・グラン・クロ」という区画のカベルネ・フランから造られた赤ワインを抜栓しました。この区画は火打石の混ざる粘土質土壌で、畑は真南に向いた丘の上部にあります。非常に日照に優れた立地です。
 「クロ」というのは「囲い」といった意味合いも持っているのですが、この畑は周りを丁寧に石垣で囲ってあります。

 一般的なカベルネ・フランの味わいは「ピーマンのような青臭い香り」「酸味が強い」「渋い」という印象の物が多いですが、彼の造るワインは一体どのような味わいを見せてくれるのでしょうか。

色調
 やや曇りがかった中程度のガーネット色をしており、淵はレンガ色に近い赤になっており、熟成の年数を思わせます。

香り
 アタックにはシダやクローヴ、インクのような香りがありフルーツの香りは控えめです。しかしながら、抜栓後に空気に触れ、温度が上昇していくと共にブラックチェリーを基調とした黒系果実の香りがしっかりと現れます。
 フルーツの香りとキャラメルを思わせるような甘い香りが心地良さを与えてくれると共に、なめし皮や樹木を思わせる香りも現れワイン全体を複雑な物にしています。

味わい
 抜栓直後は甘味が表れていない為、酸味が先行します。しかし、味わいに関しても抜栓後の時間経過と共にやさしい甘味が表れ、口の中に広がります。熟成された事で柔らかくなったタンニンが滑らかに舌を流れ、落ち着いた味わいと長く心地の良い余韻を運んでくれます。

 総じて複雑でありながら広がりのある香りを持ち、熟成を経て洗練されたしなやかな味わいが美味しいカベルネ・フランでした。


 熟成された香りや味わいというものは、長い年月を経る事によってのみ得られる特別な物なのです。しかしその経過の中では、果実の香りも削がれていってしましいます。古いワインなのに、果実感が残っているワインは貴重な存在なのです。

 今回の「ル・グラン・クロ 2009」は熟成感と果実感の両方を併せ持ったワインと言って良いでしょう。素晴らしい味わいでした。


 カベルネ・フラン世界の最高峰の造り手のアミロ氏と、そのワインをたまたま長期間寝かせる事が出来た偶然に、感謝の止まらないテイスティングとなりました。

小林

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