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でっかいワイン
ワインのこと

でっかいワイン

 ワインの一般的なボトルの容量をご存知でしょうか。

 今現在最も流通しているボトルは750mlという容量で、「ブテイユ」と呼ばれています。このサイズを基準として「マグナム(1500ml)」、「ダブルマグナム(3000ml)」と容量が増えて行きます。

 この大容量サイズのボトルは、特にシャンパーニュとボルドーが有名です。例えばシャンパーニュではマグナムの後に「ジェロボアム(3000ml)」、「レオボアム(4500ml)」と増えて行き、ソムリエ教本(2019年版)に記載がある中ではブテイユ×20本分「ナビュゴゾノドール(15000ml)」というサイズにまで到達します。インターネットで検索してみると、これ以上のサイズが存在しているというから驚きです。

因みにこのボトルサイズの名称は、聖書に由来している事が多いようです。また、特殊な瓶の大きさでは1000mlの瓶や、日本では一升瓶(1800ml)等があります。これはワイン以外の瓶を再利用している事が多いようです。

 「大容量ワイン」と聞くとお得な感じがしてきますが、瓶のワインについては良くその期待が外れます。これはマグナム以降のサイズのワインはそもそも流通量が少ない事で希少性が生まれたり、またブテイユサイズに比べて良い熟成をする事が多かったり、瓶やコルクが特注品となる為にワイン原価が上がってしまう事であったりと理由があります。

 ボックスワインであれば容量に合わせて割安になっていく事が期待できるでしょう。しかしながら、ナチュラルワインの造り手では品質の良いワインをボックス容量にしている事もあり、工業的に生産されているほど安価で手に入りません。中にはボックスワイン専用のキュヴェを造る人もいます。

 この大容量ボトルの形はフランス国内でも様々です。ブルゴーニュ型(シャンパーニュ)は形そのままに順当に大きくなっていく印象ですが、ボルドー型はダブルマグナムで太さが大きく変わり、アルザス型ではただでさえ背の高い瓶が更に高くなります。飲食店さんにて持ち込みワイン会を企画する際に、温度管理について応相談となる事が多い形です。

 しかしこんな大きなボトルのワインを、一体どうやって注いだらいいのでしょうか? マグナム、ダブルマグナムまでならなんとか・・・ ですがそれ以上となると、相当な筋力と集中力が必要になりそうです。
 こういった場合、人力ではなく「デキャンティングマシーン」なる道具を利用します。大容量ワインを注ぐ為だけに存在する専門の機械です。台座にしっかりとボトルを固定し、レバーを操作し台座を傾ける事で安全にワインを注ぐ事が出来ます。また、樽やボックスワインの場合は付属の注ぎ口からワインを注ぐ事が出来ますが、瓶であっても注ぎ口が底付近に付属している物があります。

 大容量ワイン、特に樽や瓶のワインはその大きさから特別感を放っていますので、パーティーの席をより華やかで盛り上がるものにしてくれます。また前述しましたがより良い熟成をする事が多く、個人的経験でも同じ銘柄の同じヴィンテージのワインであれば、大容量の方が美味しく感じる事が非常に多いです。

 なかなか開ける事の出来ないでっかいワイン達。しかしながら、その中には美味しさ以上の魅力がたっぷり詰まっています。もし大人数でワインを囲む機会があれば、一回くらいマグナムボトルを持って行ってみて下さい。そのワインは、きっといつもとは違ったパーティーの楽しさを引き出してくれるでしょう。

小林康弘

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