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Column
ジャン・ダヴィッド/セギュレ・レ・クシャン 2015
ワインテイスティング

ジャン・ダヴィッド/セギュレ・レ・クシャン 2015

DOMAINE JEAN DAVID / Côtes du Rhône Villages Séguret “Les Couchants”

【品種】
グルナッシュ 84%
シラー、サンソー、クノワーズ 合計16%

フランスで一番美しい村とされる「セギュレ村」。その地において、伝統的農法で誠実にブドウを栽培しているベテラン農家がいます。

そう、彼こそがジャン・ダヴィッド。

「自然が大好き」「畑仕事が趣味」という彼は、日中ほとんど畑にいます。ブドウを取り巻く環境を大切にしており、除草剤、化学肥料、防虫剤といった化学物質は一切使用しません。

ワイン造りにおいても、ブドウの風味の持つ力を存分に発揮させるために人の手を極力介在しない造りをしています。

「ワインと一緒に四季を過ごす。」
ダヴィッド氏は祖父が残したこの言葉を今もしっかりと守り、ワイン造りを続けてきました。

最近無事に代替わりをすませた彼ですが、2015年はまだダヴィッド氏が現役でした。

更にこのレ・クシャンというワインは、ブドウの作柄が優良な年しか作られない特別なキュヴェです。

ジャン・ダヴィッド氏が、キャリアの集大成と呼べる晩年に造ったスペシャル・ワイン。満を持してテイスティングしたいと思います。

2015年ヴィンテージという事もあり、見た目にも熟成が伺えます。茶色を帯びた淡いガーネットの色調が年月を感じさせます。

香りの第一印象はカカオとストロベリーやブラックベリーのジャム、そしてドライフルーツのような甘やかな香りです。

グラスを回す度に果実の香りが鮮やかになっていき、隠れていたトースト香やスパイス、なめし皮のニュアンスが顔を出します。

口に含むと、香りから期待されていた通りストロベリーやブラックベリーを煮詰めたような果実感と、カカオとドライフルーツを感じさせる甘い香りがいっぱいに広がります。

飲み口は優しく、タンニンも細かく溶け込んでいます。やや強めに感じるアルコール感が全体のボディと迫力を演出しているようです。ベリー系の酸もしっかりと生きており、飲み手を飽きさせません。

穏やかな飲み心地の上、余韻は長く、ゆったりと果実感に浸る事が出来ます。

牛や羊などの赤身のステーキにベリーソースを掛けたりすると、素晴らしいペアリングが期待できるでしょう。

果実のボリューム感に複雑さ、高級感そして上品さと全てを感じ取れるキュヴェですが、どこかほっとする素朴さを持っています。優しい味わいとジャムやドライフルーツの甘い香りが、そう感じさせているような気がします。

本当に良く出来たワインは造り手そのものを想像させますが、今回の「レ・クシャン 2015」は正にジャン・ダヴィッドさんの人柄が反映されているワインと言えるでしょう。

小林

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