Midoriya Vin Nature
Domaine
ドメーヌ・フィリップ・アリエ
ロワール地方

ドメーヌ・フィリップ・アリエ

歴史について
 オーナーのフィリップ・アリエ氏は1978年から祖父を手伝ってAOCシノン、クラヴァン・レ・コトー地区のドメーヌで栽培・醸造を始め、1985年に後を継ぎました。父親はブドウ栽培を行わなかったため、彼が二代目です。早速、彼は高品質なワインを目指し栽培改善に着手しました。

 まず、除草剤などの化学物質の撒布を一切やめて自然農法に切り替えました。そして収穫量を抑えるために厳しい剪定を行い、葡萄の生育中にも芽かきや摘芯をして、旨味がぎゅっと凝縮された葡萄を育てようと試みます。コツコツと丹念な農作業を続けました。

 この頃、年に2、3回ずつボルドーのグラン・クリュ畑を見て回るようにしました。当時ブルゴーニュのワインは白ワインには優れたものが多かったのですが、赤ワインの樽熟成となるとボルドーの方が技術が進んでいたからです。こうして高度な熟成技術を見習い、より構成のしっかりしたワインを造ろうと試みます。幾度も失敗を繰り返したが、徐々に収穫量を減らしながら根気強く挑戦を続け、1993年、ついに樽熟成に耐えうるワインが完成しました。

 また1996年には、念願の“コトー・ド・ノワレ”3haの栽培権を手に入れました。1haは葡萄が植わっていたが手入れされておらず、2haは放棄されていた土地です。この土地は40度という急斜面のため、作業が難しすぎて誰も手を付けられなかったのです。しかし南向きで粘土石灰質という土壌はフィリップ氏にとっては最高のテロワールであり、素晴らしいワインができるという確信がありました。周囲の人に奇怪に思われながらも奥さんと2人で整備を進め、荒地だった2haにも96年と98年の二度に分けて植え付けを行い、徐々に改良していきます。その甲斐あって、この畑から得られたブドウは今や世界中から高評価を受けるワインになっています。

 2001年には、また別の土壌の“リュイスリー”3haの栽培権を取得します。ここには小麦が植わっていたが、その土質と真南向きという条件から、“コトー・ド・ノワレ”をさらに上回る可能性を感じ、2001年に葡萄の樹の植え付けを行いました。そして今日、まだまだ樹齢が低いにも関わらず、ミネラル豊富なテロワールとフィリップ氏の小まめで熱心な畑仕事のおかげで、すでに素晴らしいワインを生み出す事に成功しています。

 赤ワインの産地としてフランスで最北の地域にありながら、カベルネ・フランを100%使用した、熟したピュアな果実味を持った見事なワインを生み出しています。野菜っぽさなどみじんも感じさせない豊かな果実味、緻密さは他に類を見ない域に達していると言っても過言ではありません。

地理について
 フランスの中央部から大西洋まで、約1,000kmを流れるロワール河。その流域は古くから「フランスの庭」と呼ばれ、美しい城とバラエティーに富んだワインを産することで有名です。

 シノン地区は、東西に長いロワール地方のほぼ真中に位置しています。石灰質の多い土壌で、山の斜面には洞窟が多く、中にはその洞窟を倉庫として利用したり、現代風にアレンジして住居にしている人もいるとの事です。

 ドメーヌ・フィリップ・アリエは、シノン地区の中でも特に葡萄栽培に好適なクラヴァン村に位置しています。

気候について
 海洋性気候と大陸性気候の影響を受ける、温暖な気候です。葡萄畑はロワール河とその支流ヴィエンヌ川に挟まれた斜面上にあり、ぶどう栽培に最適なミクロクリマに恵まれています。

土壌について
 畑は砂と小石土壌の「クラヴァン・レ・コトー地区」に9ha、南向きの斜面で粘土石灰質土壌の「コトー・ド・ノワレ地区」に3ha、ケイ質土壌で鉱物を豊富に含む土壌の「リュイスリー」に3haという構成です。

栽培について
 「リュット・レゾネ(減農薬農法)」と呼ばれる栽培方法を基本に、除草剤や殺虫剤などは一切使わない自然農法を実践しています。もちろん畑は全て自分の手で耕します。表面で横方向に伸びる根を刈ることで、主要な根が地中深くに伸びていくように整えます。1本の木に残す芽は5~6個で、それ以外は摘芽で処理します。収穫量は極端に落ちてしまいますが、ワインの凝縮度を高めるためには欠かせない作業なのです。

収穫について
 すべて手摘みで収穫します。収穫人には、完熟した葡萄だけを選果するよう、厳しく指導します。運搬にも小さな箱を用い、葡萄の重みで粒がつぶれないよう細心の注意を払っています。
 収穫時でのSO2(亜硫酸)の添加は有りません。乳酸醗酵後と瓶詰め前に極少量(1~2mg/L)を添加するだけに留めています。
 醗酵時にも酵母は添加せず、天然酵母の活動による自然醗酵を促します。

醸造について
 アルコール醗酵は、特注サイズのステンレスタンクか昔ながらのセメントタンクのいずれかで行います。その後キュヴェ・トラディションはステンレスタンク、その他のキュヴェは樽で熟成させます。この樽も以前はCh.マルゴーとCh.ラトゥールから買ったものを使っていたましたが、現在は自社で選んだ樽を使い、新樽はコトー・ド・ノワレに、その後の樽をV.V.用に使用しています。リュイスリーはドゥミ・ミュイという大きめの樽での熟成です。

品種構成について
 カベルネ・フラン 95%
 シュナン・ブラン 5%
 平均樹齢は30年です。

評価・プレスについて
 フィリップ・アリエ氏は誰もが認めるシノンで№1の生産者です。驚くようなきめの細かい繊細なワインを毎年造り上げています。
 カベルネ・フラン100%で造られる果実味あふれるワインには定評があり、以前はシノンを評価しなかったロバート・パーカーJr.も、この醸造元の95年を飲んでからシノンが好きになったという話があります。また、ジャンシス・ロビンソン女史も、ブラインド・テイスティングでトラディションを飲み、「ボルドーのかなり上級のもの」と評価した事もあります。

 「レ・ジョン・ド・メチエ」への所属を認可されています。このグループはピュイィ・フュメのディディエ・ダグノー氏が立ち上げたもので、テロワールやブドウを尊重するという理念の下、1つのアペラシオンから1人のワイン生産者だけが集まり、情熱や哲学を共有する団体です。現在会員は約30名で、ソミュール・シャンピニーのフコ氏、クローズ・エルミタージュのアラン・グライヨ氏など、錚々たるメンバーと共に、フィリップ・アリエ氏はシノンを代表する素晴らしい造り手として推薦され、会員となりました。

 フランス内外から様々な栄誉・評価を得ていますが、ボルドーやブルゴーニュのグラン・クリュに匹敵するようなAOCを持たないロワール地方において、彼のワインはかなり特別な扱いを受けていると言えるでしょう。

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